猿の花子

小学校の頃、隣の家の仲良くしていた姉妹が、彼女たちが飼っていた黒猫が死んだ時にその悲しみのあまり何日か学校を休んでいて、動物を飼いたいけど飼わせてもらえなかった私は「あぁ、あの子たちとは毎日姉妹みたいに仲良く遊んでるけどわたしには絶対に踏み込めない領域にある感情をふたりは持ってるんやなぁ。なんやねんなその感じは。わからんし。なんやねんなそれは。」と、憧れと嫉妬とお悔やみが入り混じって消化しきれない想いを抱いたことをはっきり覚えていて、その後もやっぱり私の親への熱い説得は叶わずに犬や猫は飼わせてもらえなかったから近くの草むらで拾ってきたカエルを虫かごに入れて名前をつけて呼んでみたり、プラスチックの犬の首にビニール紐を括り付けて近所を散歩させてみたりなんとか自分を納得させていたけれど毛のある動物と暮らしたい欲求は膨らむばかりで。

さらにはお向かいの家が「花子」と名付けた猿を飼っていて、玄関を開けたら狭い道路を挟んですぐ向こう側の檻に入ったバナナを片手に持った花子とバチっと目が合う。そんな毎日。花子はまぁまぁ身体も大きくていつも檻の向こうにいて小さかった私はかわいいというより少し怖かったから仲良くなることはなく、そのまま私は隣の町に引っ越してしまい花子がその後どうなったかはわからずじまいで、その当時は"今後大きくなってもし家を出ても、また私は今と同じように近所に猫や猿がいる生活を生涯送って行くのだろうな"と朧げに思っていたけれどあれ以来まだ猿を飼っている人に会えていないから、あぁ、あれは貴重な経験やったんやなぁ。もう少し花子と仲良くしておきたかったなぁと、今もモンキーセンターに行くたびにほんの少し思ったりしています。

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犬山城下町にある喫茶店。 自家焙煎コーヒー、自家製ケーキ、ランチ、軽食など

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