「本屋でコーヒー巡り展2024の手紙②」

ベトナムのニャチャンという海沿いの町の宿に滞在していた時、歩いてすぐに海があるのに行かないとか失礼なのかもしれないとの想いから一度だけなんとなくビーチまで歩いて行ってみたけど海でいったいひとりで何をしたらいいのかがわからずすぐに宿に戻り、それから1ヶ月と少し、昼からは読書、夕方から明け方まで深酒、という規則正しいサイクルでほとんど宿の中で過ごしていました。宿のオーナーは作家を目指しているという60歳くらいの日本人男性で、宿内には日本語の文庫本が幾つかあり、私の好みではなかったのだけどオーナーお勧めの真保裕一なんかをずっと読んでいたら、毎日ベトナム珈琲飲み放題とバナナ食べ放題にしてあげるから自分の書いた小説の校正をしてほしいと頼まれ、特にしなければならないことがひとつもなかったので引き受けました。校正なんてもちろんしたことがなかったから果たしてあれでよかったのか全然わからないのだけど、彼の原稿用紙からは永遠の若さと情熱が溢れていて、なんだか胸が熱くなる思いでベトナム珈琲をひっきりなしに飲んでは作業を進めておりました。彼の書くものは、正直私の心には引っ掛からなかったのだけど彼の長い青春に少しだけ携われたことを光栄に思っています。

もう20年近くも前のこと。

彼はまだ小説を書いているかな。書いていて欲しいな。

(yome)

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